平和の温故知新@はてな

ライトノベル関連のニュース、感想、考察などを書いていました。管理人まさかの転職により2013/04/06を持って更新停止。……のはずが、たまに更新されることも。

日経のスニーカー編集部インタビューがめがっさ興味深い(第5回まとめ)

【ヒットの“共犯者”に聞く】涼宮ハルヒの場合 Ⅴ 角川書店スニーカー文庫編集部インタビュー その5

前回ログ:(第2回までまとめ)
     (第4回までまとめ)


発言者: スニーカー文庫編集長、野崎岳彦
      同編集部「涼宮ハルヒ」シリーズ担当、坂本浩一
聞き手: 日経ビジネスオンライン 山中 浩之
(以下、全面的に敬称略)

スニーカー編集部の憂鬱

聞き手 「年間での総部数は?」
    「どれぐらいが初版の部数なんでしょう」
    「今『ハルヒ』の新刊が出たら(部数は)どれぐらいですか」(補記)
    「『キノの旅』が30万部弱とか言いますよね。25万部、30万部とか」(要約)

質問について、スニーカーのお二人は全部やんわりと回答拒否。そりゃそうだ(苦笑
まっとうに回答されたほうが驚くぐらい、聞きにくい事ばかりでしょう。
ほぼ唯一まともに回答されていたのは平均刊行点数が月7冊ということくらい。

聞き手 「文庫本全体としてみたら、ライトノベルはやっぱり元気のある分野ということは言えるのではないか」(要約)
野崎  「本当に売れていた時期は、10年前」(かなり要約)


聞き手 「スニーカーさんが猛威を振るっていた時期があった」
野崎  「初版24万部、28万部という作品がごろごろしていましたよ。でも今はそういう作品はほとんどない」
    「各レーベル1つ、2つあればいい方」

・・・地雷原まっしぐら。あえてそういう流れにしたのだろうか。
しかし、ここまで回答を避けられた後だと、ちょっと気まずい感じがする。
初版部数の減少、富士見・スニーカーの衰退(合わせて電撃の成長)あたりは、
スニーカー陣営にとってあまり振られたくない話題だったんじゃないだろうか。
そして、話題は「刊行点数増加」と「1冊辺りの販売部数減少」へシフトしていく。

ライトノベル戦国時代〜増える新規参入と広がらない裾野〜

野崎 「ライトノベル系の返品率はおしなべて低い。だから、外からはやっぱり(市場環境が)良く見える」(要約)
   「参入するレーベルは増えたが、読者層はそれほど広がっていない」(かなり意訳)
   「結果的に、初版部数の低下という問題に当たる」(要約)
   「各レーベルがいろいろ対策を打って、効果のあるレーベルもあれば、苦戦しているところもある」

今のライトノベル業界で、出版サイド最大の問題がこれ。
「普段ラノベを読まない人」に強烈にアピールしたハルヒのような事例は、
狙ってやったとしても再現するのは難しいはず。
MF文庫は「ゼロの使い魔」を起用してうまく立ち回ってましたね。

野崎 「いい方を言えば認知度は上がった」(要約)
   「昔は売れていても、数字に関心を持って貰えなかった」(要約)
   「ジャンル名らしきものが付いたことで、認知度が高まったということは、非常に前向きにとらえている」

やはり勝手に名づけられたライトノベルという呼称には抵抗があるんだろうなぁ。
ジャンル名で括ったことによる良い面もある、というのは救いかも。

小さくコツコツ稼ぐ販売路線へ

野崎  「かつては、このテイストの小説は、どんなにいい作品であっても、それは卒業すべき対象だった」
    「しかし、現状のライトノベルは一ジャンル化して、おかげで、一度卒業した人たちが戻ってきている」 聞き手 「かつてのような巨峰は望みにくくても、細かい好みにきっちり対応していけば、それぞれに堅い部数が見込めるということなのか」
野崎  「やっぱり好きな人のところに好きなものを、できればある程度お財布もあるところに、物を届ける」
    「広告宣伝を含めてそういうことができることは効率がいいということ」


聞き手 「ライトノベルの編集者としてこんなことをお考えになっているというのはあるか」(要約)
坂本  「まず物語として面白い作品を作りたい。そこにライトノベルならではの要素をプラスしていく」(要約)
    「ライトノベルは単にかわいい子を出していればいいんじゃないの、というのは違う」
    「魅力の1つではありますが、単に付いているだけじゃないんだよと言いたい」

「趣味の多様化」ってのはなにもラノベだけじゃないので、
問題はそれにどう対応するか、ってことでしょう。
電撃みたいに1レーベルでほぼ全ての作品ジャンルを網羅するのも一つの方法だし。
スニーカーが行う次の一手は「女性読者取り込み拡大」に思える。
編集さんの意気込みは単純に期待したいところ。

まとめ

今回でたぶんスニーカー編集部へのインタビューは終わりだと思うけど、
ちょっと最後がまとまってない印象。
次への繋ぎの意味でも、アニメの話で締めたほうが良かったように思う。
とはいえ、ライトノベルレーベル編集部のインタビューは貴重だし、
回答拒否されていた部分も参考になりました(笑


不定期なので次がいつかは不明ですが、引き続き追いかけていきたいところ。