2007年ライトノベル10大ニュース「決定版」
記憶があやふやになりつつも書く、ライトノベル今年の十大ニュース(星ぼしの荒野から)
2007年ライトノベル10大ニュース(まいじゃー推進員会)
ギリギリまで粘って書き上げました。コミケでサプライズとかない限りこれで大丈夫・・・なはず。
ガチ長文なので暇なときにでもどうぞ。
1.新レーベル参入の動き依然として継続
ガガガ文庫とルルル文庫は業界内の勢力図をすぐに塗り替えるには至りませんでした。
「健闘している」「いや全然売れていない」と様々な評価があるため、正確な評価を下すのは時期尚早かもしれません。
昨年11月からの参入ですが、講談社BOXも「西尾維新・奈須きのこ・竜騎士07」とビッグネームを起用して存在感を放っていました。
こちらは文庫ランキングとは別枠ですが、単行本扱いで書籍ランキング上位にいることも多かったように思います。
さらに年末から来年にかけて、コーエーと一迅社の参入が発表されました。
前者は自社コンテンツの有効活用と、アジア系翻訳ものという方向性が伺えます。
後者はまだ不明な点も多いですが、公表されたラインナップには工画堂のビジュアルノベルのリメイク版と思われるタイトルもありました。
今後も各社の動向に注目したいと思います。
2.出会いもあれば別れもある。消えていったレーベルたち
ライトノベルを生んだと言える朝日ソノラマが廃業し、朝日新聞社へ業務を引継ぎました。古参のラノベ読者からこの件を惜しむ声が多く上がったのが印象的でした。
またZIGZAGノベルスがリーフ出版の経営破綻により消滅。竹書房のゼータ文庫も刊行が停止しています。
「始まる前に終わっている」を体現してしまった、カノン文庫というものもありました。
更には富士見ミステリー文庫も繋がりの深い「ファンタジアバトルロイヤル」が休刊し、一時はレーベル消滅の噂も流れました。
しかしこちらについては年明けの刊行予定が公開されており、当面は生き残りそうです。
3.「昨年から一定ペースを維持」のメディアミックス作品
ドラマCD化、コミック化、アニメ化、ゲーム化などのメディア展開は今年も数多く行われました。
変り種としては「電撃文庫ムービーフェスティバル」というレーベル名を冠した劇場アニメ化でしょうか。
実写での映画化も幾つかあります。個人的にはちょっと無かったことにしたいやつも・・・
昨年ごろからちらほら目立ってきた、「複数媒体によるコミック化」も注目すべき手法だと思われます。
また現時点では発表だけではありますが、ついにNHK枠でアニメ化となった「アリソン&リリアとトレイズ」や、単行本からアニメ化が決まった「図書館戦争」なども珍しい事例といえるでしょう。
現時点でアニメ化発表のあった作品も多く、昨年から続いているこの流れは来年もまだ続くと思われます。
4.「作家不足?」他業種からのライトノベル作家デビュー増加
これまでもPCゲームのシナリオライターによる作家デビュー事例は多くありましたが、今年は更に幅広くその傾向が強まったと感じました。
ざっと並べてみるだけでも特に話題になった田中ロミオ氏をはじめ、原田宇陀児氏、荒川工氏、東出祐一郎氏、健速氏、市川環氏などが、ノベライズ・オリジナル両方で今年デビューしています。
この傾向は昨年後半あたりには既に見られていましたが、新規参入のガガガ文庫が特に勢いを後押しした印象があります。
まだ名のあるライターさんは残っていますし、この傾向も来年に引き継がれると予想します。
5.「越境」作家へ市場の評価が定着
昨年は「越境すること」自体がニュースになりましたが、今年は少し違ったように感じました。
電撃文庫や富士見ファンタジア文庫が単行本レーベルを持って作品供給が安定したことにより、いまや単行本を発表するライトノベル作家は決して珍しいものではなくなりました。
更には「赤朽葉家の伝説」や「図書館戦争」など、文学賞や読者ランキングに名前が挙がる作品すら現れました。
同時に「ライトノベル」というフィールドに留まるかどうか、というそれぞれの作家としてのスタンスも見えるようになった1年だと思います。
さすがに売り上げ的に心配になる作品もチラホラ見られるため、この界隈の動きは多少緩やかになるんじゃないかと予想します。
6.ハウツー本や新人賞の変遷にみる「作家志望者」へのメッセージ
ガガガ文庫参入と少し関連しますが昨年から作家志望者、とりわけライトノベル業界を志望する人々へのメッセージが目立ちました。
「五代ゆう&榊一郎の小説指南」や「ライトノベル作家のつくりかた」といったそのものズバリの本も出ていますし、
スーパーダッシュ文庫と電撃文庫の新人賞での「評価シート送付方式採用」は、ちょっとしたトピックだったように思います。
ガガガ文庫は第3回の募集から、特別審査員として田中ロミオを起用してきました。
これも急な話ではありましたが、「状況に対応した」という意味では評価できるかと。
ここ数年、新人賞の数も増えて作家デビューへの選択肢が広がった反面、自分にあった応募先を見つけることも必要になってきているのではないでしょうか。
ライトノベル系の新人作品応募数は概ね増加傾向のはずなので、各レーベルの編集部は負担が増えていそうでちょっと心配です。
7.「10年に1人の逸材」は無かったものの、充実した新人勢
まぁ、さすがに毎年突出した新人が現れるわけじゃないでしょう。
新人作家の出来不出来については個人的な主観も多く含まれるところですが、
私としては今年は豊作だったように思います。
主だったレーベルから1冊ずつ挙げるだけでも以下のような感じです。
レーベルによっては更に追加したいくらい。
「扉の外」
「黄昏色の詠使い イヴは夜明けに微笑んで」
「バカとテストと召喚獣」
「時載りリンネ!」
「たま◇なま」
「鉄球姫エミリー」
「アストロノト!」
「ドラゴンキラーあります」
一つ前の項でも述べたように、デビュー後にどこまで安定して活動できるかも作家の力量と言えます。
デビューした作家さんには、無理のない範囲でご活躍していただけることを期待しています。
8.まだまだ続くよどこまでも「ライトノベル定義」定まらず
これは主にネットのみの話題かもしれませんが、まぁ一応。
今年もまぁ不毛といえば不毛な議論が幾つかありました。
議論するメンバーが毎回同じなら経験も蓄積されるのですが、
新たにアニメからライトノベルに触れた人などが「名前は聞くけど実際ライトノベルって何?」
という疑問を持つのはある意味当然かと思います。
とはいえ、雑誌の特集などでは簡単な注釈をつけてあまり深く触れずに本題に移る様子も見られました。
一般的にもある程度の共通理解が広まっている・・・のかもしれません。
「定義論をしてはいけない」と言う気はさらさらないのですが、
ネット上で議論するときはいろいろ注意しましょう。というくらいでしょうか。
幸い、調べればそれなりに過去の記録も残っているかと思うので、興味のある方は過去ログを辿る旅に出てみるのも良いかもしれません。
9.悲喜こもごも?「完結する作品、引き伸ばされる作品」
今年は誰もが知る人気シリーズの完結こそなかったものの、多くの作品が惜しまれつつ完結していきました。
「抗いし者たちの系譜」シリーズ
「ジョン平とぼくと」シリーズ
「上等。」シリーズ
「いぬかみっ!」シリーズ
「護くんに女神の祝福を!」シリーズ
「クジラのソラ」シリーズ
「ダークエルフの口づけ」シリーズ
「モノケロスの魔杖は穿つ」シリーズ
「刀語」シリーズ
「Dクラッカーズ」シリーズ(レーベル移籍)
思いつくものを挙げてみましたが、他にもまだまだあったと思います。
中には打ち切りっぽいものも・・・というのは言わぬが華でしょうか。
完結する作品があることは今に始まったわけではないのですが、ここ最近は「ちゃんと終わる作品」が目立ってきたのかもしれません。
反対に人気が出てしまってなかなか終われなくなったと思われる作品も。
「涼宮ハルヒ」シリーズ
「灼眼のシャナ」シリーズ
「とある魔術の禁書目録」シリーズ
「狼と香辛料」シリーズ
などが思い浮かんでしまいます。
また「フルメタル・パニック!」シリーズなどは完結間近と思われますが、決着は来年になりそうです。
「まだまだ楽しめる」と思うか「もう終わらせてくれ」と思うかは人それぞれでしょう。
10.似てるようで全然違う「ケータイ小説」の躍進と「ケータイ向けライトノベル」のマイペース
これも今年がちょっと目立っていただけで、流れ自体は昨年からあったかと。
とかく目の敵にされることの多いケータイ小説ですが、アプローチが違うだけでライトノベルと似た部分も持っています。
ケータイ小説を批判するつもりが、ライトノベルにも当てはまるような内容だったりする・・・なんてことは避けたいですね。
象徴的だったのはやはり「魔法のiらんど文庫」の創刊でしょう。
お互いの得意なところを活かしていく方針はとても納得のいくものでした。
ちなみにライトノベルのケータイ向け配信はというと・・・よくわかりません。
少し前はひたすら拡大路線かと思っていたのですが、配信する作品を厳選するような動きもみられます。
まぁ、勢力的には「ちょく読み」が最大手かと思いますので、ここを押さえておけば傾向は掴めるのかも。「ワーズギア」とか元気でやってるのでしょうか・・・
まとめ
ここまで大まかに10個に分類して、今年のライトノベル業界を振り返ってみました。
10大ニュースじゃなくてただの総括なんじゃないかという気がしなくも無いですが、個人的には色々考えながらまとめることが出来て楽しかったです。
今年一年はどちらかと言えば良いニュースが多かったですが、悪いニュースもあったので気が抜けません。
富士見ミステリー文庫とか、来年に持ち越しになった感も少しありますし。
来年の動きでほぼ確実なのは「富士見ファンタジア20周年」&「角川スニーカー20周年」という大きな節目に両者が動いてくることだと思います。
もちろん、トップの電撃文庫もまだまだ勢いは衰えないでしょう。
古参レーベルが盛り上がる中で、新規参入レーベルがどう立ち回るのかも注目したいです。
追記
いろいろと記述ミスとか記憶違いがあったので修正。
いつもすみません・・・