平和の温故知新@はてな

ライトノベル関連のニュース、感想、考察などを書いていました。管理人まさかの転職により2013/04/06を持って更新停止。……のはずが、たまに更新されることも。

アニメ「バッカーノ」はある1点においてハルヒを凌駕している

バッカーノ! 1 [DVD]

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現在、WOWWOWで放送中のアニメ「バッカーノ!」が凄い。
原作既読の人に一言で説明するなら「1巻〜4巻を並行して展開している」といえば伝わるだろうか。アニメの「ハルヒ」を観ている人にであれば「ハルヒよりも凄い時系列シャッフルをしている」といえば、その一端だけでも伝わるかも知れない。

■アニメ化の背景■
もともと、今回のアニメ化にあたって発表された情報からは以下のエピソードが描かれることが予想できた。

1作目。通称1930とか無印とか。
「不死の酒」をテーマにしてニューヨークで馬鹿騒ぎする話。

2作目。上下編ではなく、表と裏のような関係。
通称は1931で、豪華列車を舞台に馬鹿騒ぎする話。

3作目。DD社という新聞社(情報屋)を軸にギャングなんかが入り乱れて馬鹿騒ぎする話。


今回のアニメの基になったエピソードを読みたいのであれば、この4冊で大部分はカバーできるはずである。
とはいえ次回放送の第7話には上記3作品にはまだ登場してない人物も見受けられており、本当に上記の作品だけで終わるのかも怪しい状態である。
そういう意味では原作既読者も油断の出来ない構成になっているといえる。


■「シーンシャッフル」という無茶■
このアニメが「ハルヒ以上」に凄いところは「30分の間に何度も作中時間がいったり来たりする」点だ。
こちらのサイトで時間軸を整理しているが、6話だけでも以下のようになる。

 「1932」の話が圧縮されて「1931」と同時進行という事らしい為、今後は「1932」のを「1931(元1932)」と表記します。

 1931(元1932)(DD新聞社社長室。お叱りニコラス)

>1931(プッシーフット。レイルトレーサーに虐殺されていく黒服)

>1930(ガンドールファミリー根城。ダラスを路傍の石扱いするラック)

>1931(プッシーフット。メリーを放置するチェス)

>1931(プッシーフット。放置されているニック)

>1931(プッシーフット。発見されるメリー)

>1931(プッシーフット。白服と不良の遭遇)

>1930(路地裏。ひき逃げ後でふらつくバカップル。いらつくダラス)

>1931(元1932)(ジェノアード邸? イヴを狙うグスターヴォ)

>1931(プッシーフット。血まみれ倉庫。不良組、レイルトレーサー目撃)

>1930(路地裏。ダラス達をのし倒すエニス)

>1931(元1932)(DD新聞社社長室。暗躍するニコラス)

>1930(秘密社交場。謎の注射をされるダラス達)

かろうじてメインは1931なものの、ここでも更に1931の中で「鈍行編」と「特急編」の要素を進行させている。
時系列シャッフルで話題を呼んだアニメ版「涼宮ハルヒの憂鬱」も各話ごとの順番を入れ替えただけで、ここまでの極端なシャッフルは行っていない。正直なところ、原作未読の人がついていけるのか不安になるくらいのかっ飛ばし具合である。
「なぜこんなことをしたのか」という疑問を持っている人も多いのではないだろうか。


■最後に待つ「馬鹿騒ぎ」■
原作である小説版の魅力は「複数の物語が一気に収束するところ」と語られることが多い。
今回のアニメ版は、これを最大限に効果的に見せるため、一見すると無茶なシーンシャッフルを行ったのではないだろうか。
これは完全に推測だが、アニメ版の終盤では「1930」「1931」「1932」全ての時系列においてのクライマックスが同時に描かれるかもしれない。それはきっと普通に刊行した順でアニメ化するより遥かに大きく、派手な「馬鹿騒ぎ」になるだろう。
ハルヒの場合は1巻の終わりが一番盛り上がるため、それを最後に据えるように時系列をシャッフルしたといえる。「バッカーノ!」はそれをこえようとしている。原作4冊の山場を全て最後に持ってくるためにシャッフルしているのだ。


もちろんこの手法には弊害がある。シーンの把握が難しいし、序盤は盛り上がりに欠ける部分もある。しかし最後まで見たときの爽快感はそれらを補って余りある・・・かもしれない。
出来ることなら、途中で見捨てずに最後までこのバッカーノ!(大騒ぎ)を見守って欲しいと思う。