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ライトノベル関連のニュース、感想、考察などを書いていました。管理人まさかの転職により2013/04/06を持って更新停止。……のはずが、たまに更新されることも。

アニメ化記念(勝手)企画!「バッカーノ!」シリーズ全作品解説

(登場人物把握用の参考リンク)
「バッカーノ!」登場人物メモ(ネタバレ)
バッカーノ人物表


記念すべきシリーズ第一作目。第9回電撃ゲーム小説大賞の金賞作品。
一貫した主役は存在せず、複数の視点で描く群像劇のような作風はこの時点で既に完成している。
この巻での主人公的な役割はフィーロ・エニス・アイザック&ミリアなど。
禁酒法」時代のアメリカで「不死の酒」を巡る騒ぎが起こるところに皮肉がきいているといえる。作者としては「螺旋」を意識した構成らしい。


新人賞受賞後第1作。刊行に合わせて「特急編」の刊行予定も発表される。
「鈍行編」と「特急編」は上下巻構成ではなく、一つの事件を別々の視点から描いた構成になっている。そのため、鈍行編単体では明かされなかった伏線も存在する。
主人公的な役割はジャグジー(とその仲間)・グース(と黒服集団)・ラッド(と白服集団)・アイザック&ミリア・ネイダーなど。
大陸横断鉄道を舞台とし、複数のグループがそれぞれの思惑で行動して混乱した状況が、ふとしたきっかけで1点に収束していく爽快さを味わうことができる作品。


「鈍行編」から間をおかず連続刊行された、もうひとつのエピソード。
「鈍行編」で明かされなかった謎を明かしつつ、新たな登場人物たちのエピソードもふんだんに盛り込まれている。
特に不死の酒によって「不死者」となったキャラに関する事柄は、シリーズを通じて様々な物語へ影響している。
主人公的な役回りはチェス・レイチェル・クレア・シャーネ・ラッド・アイザック&ミリアなど
特急編で活躍する人物は良くも悪くも変人が多いため、アクの強い内容になっている。しかしそれは魅力的なキャラが多いということでもあり、後々主役として再登場するキャラも多い。
「鈍行編」「特急編」をあわせた「1931」について作者のイメージとしては「並行する二つの線路」とのこと。


シリーズ第3弾にして4作目。舞台は再びニューヨークに戻る。「無印(1930)」や「1931」とリンクする箇所も多く、登場人物も加速度的に増えていく。
サブタイトルは「麻薬」がキーアイテムとなり、事態がドミノ倒しのように展開することを指していると思われる。
主人公っぽい人物はイヴ(少女)・ベグ(錬金術師)・ロイ(麻薬中毒者)・ガンドール三兄弟(マフィア)・アイザック&ミリアなど多数。
シリーズの中でも特にマフィア同士の抗争が物語に関わっており、それ系の映画(「ゴッドファーザー」など)が好きな人はより楽しめるかもしれない。
また特筆事項としてシリーズ全体に関わってくる「DD新聞社」が本格的に登場したエピソードでもある。ちなみにDD社副社長のCVは若本規夫御大。アニメ1話のサブタイトルも彼を意味していると思われる。


舞台をおもむろに21世紀に移したシリーズ5作目。「不死者」ではなく「錬金術師」がキーワードと言える別シリーズ。もちろん既存の作品との関連も存在する。
主人公を担当するのはエルマー・チェス・シルヴィ・ナイル・マイザーなど。また名前だけだがその他の錬金術師・不死者も登場する。
既存の「193x」シリーズとは様々な点で違いが見られる作品。後述の「1705」とのリンクも多い。


「1932」から時系列としては続いているが、登場人物は更に入れ替わったシリーズ6作目。上巻では特に「刃物」がキーワードになっている。
主要な人物はチック(鋏使い)・マリア(刀使い)・アデル(槍使い)・シャーネ(ナイフ使い)・アイザック&ミリアなど。特にチックとマリアは「1932」に脇役として登場していたが、突然主役に抜擢されている。
このエピソードは構成的に「無印(1930)」や「1931」に近く、持ち味の「混乱した状況の収束」を味わいつつ決着を次巻へ持ち越している。


シリーズ7作目にして「1933」の下巻。上巻のテーマを受けて「キレた奴ら」がテーマだと思われる。
また登場人物は更に更に増えて凄いことになり始める。「1933」は上下巻とも登場人物一覧が追加されているのだが、それでも人間関係の把握に苦労する可能性が高い。
主役級なのはティム・ダラス・クリストファー・「葡萄酒<ヴィーノ>」・チック&マリア・アイザック&ミリアなど。
下巻では新たな要素として巨大企業「ネブラ」と錬金術師ヒューイの対立もクローズアップされるようになった。あとがきで作者自ら「1933からヒューイ編」とも言及しており、この流れは以後も引き継がれる。
特記事項としてミリアに関するちょっとした疑惑が提示されており、ファンにとってはとても気になるものだったことを付け加えておく。


「1933」から続いた形になったシリーズ8作目。「獄中編」と「娑婆編」が発表されていたため「1931」のような上下冊構成かと思いきや、「完結編」が存在したためシリーズ初の3部作になった。
名前の通り監獄が舞台であり、既刊で活躍した人物達に活躍の機会が与えられている。主人公に近い立場はフィーロ・ラッド・ヒューイ・アイザックらが該当する。
この後に続くエピソードとの兼ね合いもあり多くの出来事が謎のままに「娑婆編」へ続くが、それを補って余りある登場人物たちの活躍を楽しむことができる。


「1934」の中編。シリーズ9作目。シカゴを舞台とし、作中時間は「獄中編」と繋がっている。「獄中編」と「娑婆編」の内容を受けて「完結編」に続く内容になっている。
より一層誰が主人公なのか判然とせず、出番の多さを参考にするなら副社長・レイル(とその仲間)・グラハム・クリストファーなどが主要な登場人物といえる。
「ネブラvsヒューイ」の構図を裴景に持ちつつも特定の人物についての物語にもスポットを当てているため、物語の全容を掴むのは困難である。登場人物の台詞などから推測すると、それすら意図的なもののようだ。


シリーズ10作目にして「1934」の完結編。とにかく分厚く、シリーズ最大のボリュームを誇る。新たな登場人物の出現はひと段落しているものの、そもそもの人数が多いのであまり意味が無い。
強いて言えばフィーロ・ヒューイ・アイザック&ミリアの描写が目立つが、ここまで来ると少数の人物だけで事態は動かず、常に複数のグループが複雑に絡み合いながら物語を進めている。
ある程度の決着はつくものの、更なる展開の序章といった様子も伺える。推測ではあるが、今後はみたびニューヨークを舞台に「ヒューイ編」の総決算的なエピソードが描かれるかもしれない。


シリーズ最新作&11作目。ヒューイとエルマーの少年時代を描いた番外編的なエピソード。「2001」や「1934」と密接にリンクしている。
番外編のためか、視点移動はあるものの中心となるのはヒューイである。また後に親友と呼び合うエルマーの出番も多い。
「170x」の作品もシリーズとして構想があるらしく、こちらは主に特定の人物の過去話となるようだ。今後展開される「193x」系の物語をより楽しむためのシリーズとも言えるだろう。
なお現時点で予告されている「バッカーノ!」シリーズは「1935」「2002」「1710」がある。