平和の温故知新@はてな

ライトノベル関連のニュース、感想、考察などを書いていました。管理人まさかの転職により2013/04/06を持って更新停止。……のはずが、たまに更新されることも。

日経のスニーカー編集部インタビューがめがっさ興味深い(第4回までまとめ)

【ヒットの“共犯者”に聞く】涼宮ハルヒの場合 Ⅲ 角川書店スニーカー文庫編集部インタビュー その3
【ヒットの“共犯者”に聞く】涼宮ハルヒの場合 Ⅳ 角川書店スニーカー文庫編集部インタビュー その4

前回ログ:日経のスニーカー編集部インタビューがめがっさ興味深い(第二回までまとめ)


発言者: スニーカー文庫編集長、野崎岳彦
      同編集部「涼宮ハルヒ」シリーズ担当、坂本浩一
聞き手: 日経ビジネスオンライン 山中 浩之
(以下、全面的に敬称略)

興味深い内容「味わっても無くならない飢餓感」

坂本「構成順がかなりとびとびであるということで、先を知りたいという欲求が高かったんだと思います」
  「「原作を知った上で、アニメを見るともっと面白い」という相乗効果が生まれたんだと思う」
  「もともと小説の方も、決して時系列順に並んでいるわけではない」

ハルヒのヒットを語る上で外せない要素その1「時系列シャッフル」について。
ここで注意したいのは、「もともと小説が時系列シャッフルしていた」という点。
時系列が行き来した理由はザ・スニーカーでの連載という要素が大きいと思われる。

聞き手「原作ではずっと先の巻に載る話が、時系列で行くと2巻までの話に割り込んだりしている」
坂本 「やはりその辺で、まとめ買いが多くなったと思っている」(要約)

前回提示された「まとめ買い現象」についての答えの一つだと思う。
少なくとも私は「なるほどなぁ」と思えた。

野崎 「映像自体の完成度があって、かつヒットした作品の場合、ノベライズが「追体験」の場になる」(要約)
   「なぜ追体験したいかといえば、その面白さをもっともっと味わいたいという、飢餓感があるから」 
   「ハルヒの場合はノベライズではないが、見て面白い上に飢餓感があるんだと思う」(要約)
   「もし原作の無い映像作品なら、様々な手段で飢餓感を解消する」
   「しかし、今回の作品には一番手に取りやすいところに原作の存在があった」(かなり要約)

「ノベライズ」を「メディア展開」と読み替えると更に理解しやすいかもしれない。
ハルヒの場合なら「アニメ→小説」という流れで飢餓感を煽りに煽ったということに。
関連した媒体の特集、ネットでの盛り上がりも、もちろん追い風効果があったはず。
その大波の先端に位置したのが「原作」ということなのだろう。

聞き手 「原作を読んでも謎は深まるばかりではある」
野崎  「その意味では原作もそうやってみると、実は映像をまったく補完していない」
聞き手 「さらに深まる飢餓感をうまく癒してくれたのが、すごく出来のいいファンのサイト」
野崎  「謎や飢餓感に、ウェブ上のコミュニケーションがかかわって、最初は小さな波が、非常に莫大なリアクションになった、と思う」

と、いうことらしい。ネットの力を多少なりとも感じていると捉えていいかもしれない。
(まぁ、なかにはろくでもないリアクションもあったけど)

「衝撃の第一話をどう感じたか」

聞き手 「アニメのあの第1回や、構成順をばらばらにしますという話って、原作を守る立場からしたら「ちょっと待ってくれよ」みたいな話ではないか」(要約)
坂本  「最初から構成の部分とかには著者の谷川さんが入って、スタッフの方々と打ち合わせをしていた」(要約)
坂本  「第一に著者である谷川さんが認めていることであればいいのでは、と、担当としては考えていた」
野崎  「実は、僕はちょっと怖かったんだけどね(笑)」


坂本 「会議室でプロジェクターを使って、編集部を集めて(1話の)試写をしたところ、全員が呆然としていた(笑)」(要約+注釈)
坂本  「「濃い」人間は、「いや、これはすごい!」「傑作だ!」と言っていた」(要約)
野崎  「ある意味、その場は侃々諤々だった」(要約)
    「だから(アニメの放映を)、決して楽観視していたわけでないのは確か」

そりゃそうでしょう・・・冗談抜きで大勢の視聴者の度肝を抜いたはず。
当時、ネットの感想も賛否両論嵐の如く、だった記憶があります。
もちろん、一番大騒ぎしていたのは原作未読者で、既読者の受けた衝撃はまだ軽かったかも。

「スニーカー編集部内に存在した共犯者」

野崎  「もちろん、(第1話の)シナリオは知っていた」
    「ただ、アフレコの現場に行っているのは担当の坂本だけ」
    「坂本だけは(これから何が起こるか)全部知っていた」(かなり要約)
坂本  「正直に言って、どきどきもしたが、『ハルヒ』ならいいというところもあった」(要約)
野崎  「坂本は京都アニメーションのスタッフや、原作の谷川さんと話をした上で、ある意味、(アニメの)スタッフの1人としてかかわっていたから」(要約)
    「企画は知っていて、シナリオを読んではいたけれど、それと現物を見るのとでは大違い」
    「シナリオには「全力を挙げて『素人映画』クオリティを再現します」なんて書いてなかった(笑)」(要約)
    「アニメであそこまで作り込むと知っていながら、それを我々に言わなかった坂本は、立派な共犯者」

ということで、主犯と共犯者がだいぶ浮かんできました。
スニーカー編集部は共犯ではなく、担当さんのみが共犯者だった、という。
考えてみれば当然のハナシではある。

「原作を理解すればこその作りこみ」

聞き手 「第1話の面白さ、すごさは、「文化祭の素人映画でありがちなパターン」の正確な再現にあるが、その洒落は言われないとなかなか分からない」(要約)
    「その再現ポイントをがーっと列記しているサイトを読んだおかげで「こんなことをアニメで、わざわざやっていたのか」と気付いた」(要約)

これは、映像制作を経験したことがあるかどうかが分かれ目だったはず。
経験者の「あー、あるある」というネタが凝縮されていた。
げに恐ろしきは京アニスタッフ。おそらく首謀者の一人である山本寛さんは学生時代に特撮もやってたんだっけ?

まとめ、そして次回「ビジネスとしてのライトノベル」にも期待にょろ

今回ここまで。というか様子見してたら案の定、連日更新でした。(笑
次回でたぶんスニーカー編集部への聴取は終わり。その後に京アニかな?
いやはや、前回に引き続き興味深いところが多々ありました。


ここまでで抑えておきたいところは

  • スニーカー編集部はハルヒブームを主導したわけではなかった
  • ハルヒブームの根本には原作・アニメ共に「シリーズ構成」からくる「飢餓感」が重要な要素
  • ネットの力も確かにある程度は貢献した・・・と言えそう

といったところ。
「異様に出来の良いEDアニメ」という要素もあるはずなんですが、まぁそこは余禄でしょう。


前回の予想と今回の内容を見ると、「担当は共犯者」という部分は私の頭から抜け落ちていたようです(苦笑
今のところの予想は
主犯「京アニの誰か(山本寛氏?)」
共犯「担当の坂本氏」
共犯「谷川流氏本人」
こんなとこなのですが、企画方面にもう一人くらいいそうな気もします。
その人があの「ライブアライブ」によるCDプロモも演出したんじゃないかなぁ、とか。


次も楽しみですが、大雑把にでもいいので更新予定を公開してくれると追っかけやすいです・・・