平和の温故知新@はてな

ライトノベル関連のニュース、感想、考察などを書いていました。管理人まさかの転職により2013/04/06を持って更新停止。……のはずが、たまに更新されることも。

「なろう小説」らしくない「なろう小説」、遂に書籍化した「リーングラードの学び舎より」を全力でオススメする

ご無沙汰しています。平和(あるいは編集K)です。
もともと4月頭には近況報告とかしようと思っていましたが、
少し前倒しての更新となりました。
サイト更新停止とはいったいなんだったのか……


ともあれ、今回の更新で取り上げるのは3月25日にオーバーラップ文庫から刊行される
「リーングラードの学び舎より」
についてです。


まあ、自分が担当編集なんですが、この作品に関しては一度しっかり紹介しておきたかったので。
なるべく一読者目線で書いていますが、宣伝ではあるので、
そういうのが嫌いな方はそっと閉じて頂ければと。

リーングラードの学び舎より 1 (オーバーラップ文庫)

リーングラードの学び舎より 1 (オーバーラップ文庫)

どんな作品?

小説家になろう」という小説投稿サイトに連載されていた作品です。
架空のファンタジー世界を舞台にした学園もの、教師ものです。
あまりチートっぽくはないですが、主人公は大活躍します(笑)

リーングラードの学び舎より
http://ncode.syosetu.com/n7826bd/


■WEB版あらすじ
リスリア王国で特殊なプロジェクトが動き出した。
貴族社会にあるまじきプロジェクトの名前は『義務教育推進計画案』。
計画の成功のために、いきなり教師をやらされるハメになったリスリア王国の賓客ヨシュアン・グラム。
この物語は彼を中心に巻き起こる生徒たちや教師、国すら巻きこんでの騒動をまとめたものである。


著者はいえこけい氏。連載中のシリーズはひとまず「リーングラード」のみ。
現在までに全332話、250万文字近くの分量で、教師ヨシュアンを中心とした物語が展開されています。


そして、「小説家になろう」とコラボし、2014年に発表された第1回オーバーラップ文庫WEB小説大賞の大賞受賞作でもあります。
受賞からほぼ1年を費やし、ようやくこの3月に1巻が刊行となりました。
(本当に、本当にお待たせいたしました……!)

どこが面白いの?

WEB版もある程度含めて語ってしまいますが、この作品の魅力は
「個性豊かで魅力的な大人たち&生徒たち」
「膨大な設定に支えられた、奥深い世界観」であると思います。


序盤のストーリーラインは乱暴に言うなら
「ファンタジー世界で型破りな教師もの」
とでも言えるもので、無理やり教師にされたヨシュアンが四苦八苦しながら、
貴族・商人・修道院・孤児・エルフなど、それぞれの事情を背負った
個性的な5人の問題児たちの手綱を握っていく話です。


ですが、それだけではありません。
生徒たちを教えることを通じて、過去に様々な体験をしてきたヨシュアンもまた、成長していく様子が描かれます。
生徒と教師が相互に影響を与えつつ成長する様子に、
自分は「こういう先生がいてほしかった!」と感じました。


1章時点でも登場人物が多いのですが、2章以降にも魅力的なキャラクターが多数登場します。
序盤から存在が仄めかされている人物達もいて、
あとで登場した時に色々と納得することも。
キャラ関連についてはアキバblogで公開されているインタビュー記事も参考になります。


またこの作品世界を構成する要素には、とても一筋縄ではいかない秘密がありそうなのです。
まだ明かされていない部分を想像で補っていく作業もまた、とても楽しいです。
特にヨシュアンの素性については……っと、推測含むのでこれは各自判断で。
「過去の内乱」や「この世界の神話」について、そして舞台となるリスリア王国の隣国も絡んでくるような、
スケールの大きい物語も楽しむことが出来ます。

WEB版と書籍版でどう違うの?

書籍の1巻は、WEB版でいう「第一章」に相当します。


WEB版は特に序盤が読みにくことに定評がありましたが、
地獄のような取捨選択の結果、それが1冊にまとまっています。
(まあそれでも普通のライトノベルではありえない厚さですが……)


先のリンクと、オーバーラップ文庫で公開している立ち読みページを比較しても面白いかもしれません。


実はこの作品、小説家になろうの作品群が覇を競う、ランキングなどではあまり評価されていませんでした。
評価基準となるポイントの数値は14,891ptです。
これは過去に書籍化した作品の中でも屈指の低さのはずです。


推測するに、面白くなってくる序盤以降になるまで辿り着けず、
読者が振り落とされていたのがWEB版だったのかな、と。


そんなハードルのある作品だったわけですが、序盤を再構成した1巻が出た今こそが、
この「リーングラードの学び舎より」という作品を堪能できる良い機会とも言えるはず。


書籍版を読んだ後、WEB版の2章に入ってもそこまで大きな違和感は出ないはずです。
細かいイベントは変わっている部分もありますね。
著者さんからはなにやら思わせぶりなコメントも……
できれば、WEB版と書籍版、両方を味わってみてほしいと思います。

以下私見

自分が初めてこの作品を読んだのがいつだったのか、微妙に記憶が曖昧ですが、
確か既に「隠れた名作」として評判になっていたはずです。


気づいたのは完全に後になってからですが、敷居さんの同人誌に収録されている座談会で、
橙乃ままれ先生がオススメ作品として挙げておられるのですよね……
当時はこれ読んだはずなのですが、完全にスルーしていました。


ここだけちょっと仕事モードも入りますが、
小説家になろう」の新人賞選考でいろいろな作品を読んでいると、
本当にいろんな作品がありました。


どうしても新人賞というのは賞ごとの基準で選考するものなので、
取りこぼすものは出てきます。
しかし、そんな中でも読者、そして選考者も唸るような作品があるのです。


ともすればランキングが重視されがちな「小説家になろう」の作品の中で、
上位でなくとも「本当に面白い作品」はある、と。
「リーングラードの学び舎より」という作品は、それを私に教えてくれた作品です。


もともと、幾つかの連載作品・書籍化作品を読んでおり、その奥深さの一端には触れていたのかもですが、
また違った形での新鮮さがありました。


書籍化という形で、より多くの読者の目に触れる機会を作れたことを光栄に思いますし、
やるからには少しでも多くの人に! との考えから、こういう記事を書いてみました。


少しでも気になったら、まずは1巻から、手にとって見てください。
いちライトノベル読み「平和」として、オススメです!